私はよく刑事ドラマを見るのですが、実際に警察官を経験した身としてはドラマの設定や装備品について「あれれ?おかしいぞ~。」と感じることがよくあります。先日見たドラマでも半端じゃない違和感を覚えたシーンがあったのでご紹介します。

バイオテロの装備が無意味

そのドラマでは犯罪者が新型のウイルスを作ってバイオテロを起こすシーンがあったのですが、通報を受けて駆け付けた警察官たちの装備品が間違いだらけでした。

通常ではウイルスや細菌などを用いたバイオテロが発生した場合、所轄の警察官では対処できないため機動隊などに所属している専門の部隊員が現場での証拠保全や採証活動、負傷者の救助、使われた生物兵器の種類の特定などを行います。

専門の部隊員は予めバイオテロの可能性があると分かっている状態であれば、完全防護できる宇宙服みたいな恰好をして現場に入るか、宇宙服よりも簡易的なスクーバダイビングのような装備を用います。現場周辺の空気中に漂う細菌やウイルスを直接吸わないようにするため、外部からボンベを持ち込むわけです。

 

ところが私が見たドラマでは、このような装備↓で現場に入っていきました。

タイベックスーツ タイベックスーツ2

ガスマスクみたいなのを装着しているし変なスーツを着ているし、なんとなく見た目的にはバイオテロに通用しそうに見えます。でもこれ、ウイルスや細菌兵器に対して全く防護効果がないんですよね。

わかる人にはわかるのですが、上の画像の装備はタイベックスーツといって、主に放射線物質を扱う環境で着用する装備です。空気中に含まれるチリや埃を吸い込むのを防ぐためのものであり、ウイルスや細菌には無力なんです。こんなのを着てバイオテロが疑われる現場に入ったら全員死ぬわ!

まあ実際には細菌の種類によって感染しやすさが違うので必ず死ぬとは限らないのですが、タイベックスーツを着ても生物兵器に対して防護効果がないという意味ではまったくもってナンセンス。息を止めて入った方がマシなくらいです。

 

放射性物質、生物兵器、化学兵器によるテロに対する対応方法や装備についてはまた別記事でまとめたいと思いますが、とりあえずタイベックスーツで生物テロが疑われる現場に入るのは「ありえない」と思ったので当記事を書きました。

日本のドラマは低予算で作っているので質も低く、内容も設定もテキトーなんだな…とよくわかります。異世界物のアニメを見ていると思って「この世界ではこういう設定なんだろう」と思えばそれまでなのですが、リアルを追求しているようにみせかけて肝心なところで設定がガバガバだったので、実際の現場を知っている者としてはツッコミを入れたくなりました。