自転車盗や万引きなどで警察官に捕まった後、警察署では一体どのような手続きを踏むことになるのか?検挙されたり逮捕されたりした経験が無く、気になっている方が多いかと思いますのでご紹介します。

微罪の場合

  • 犯行が計画的ではなく突発的に発生した犯罪
  • 被害金額が僅少(おおむね2万円以内)
  • 被害の回復が容易である

このような特徴のある犯罪で検挙されると、微罪処分といって警察署内部での処理ですべての手続きが終わります。検察に連行されることもないし、留置施設に入れられることもありません。万引きや自転車盗品、暴行事件などがよく微罪処分で処理されます。

微罪の場合、検挙されて警察署に行くと

  1. 取り調べを受け、供述調書を作成する(身上調書と犯行の供述の2種類)
  2. A登録(顔写真・指掌紋の登録)
  3. 身柄受け(微罪の場合のみ)

これらの手続きがあります。1つずつ解説すると。。。

取り調べを受け、供述調書を作成する(身上調書と犯行の供述の2種類):1~3時間程度

まずは取調室に案内され、取り調べが始まります。

取調室は署内にいくつか用意されており、刑事ドラマとかでよく見る窓が無くて狭くて机が1つ、椅子が2つだけ置いてある部屋です。

取調室では供述調書(甲)と呼ばれる書類を2つ作成します。

  1. 身上調書
  2. 犯行の供述

の2種類の内容です。

身上調書の方では、被疑者がどこの誰なのか?をハッキリさせるための内容をまとめることになっており、

  • どこで生まれたのか?
  • 誰の子供なのか?
  • 家族構成
  • 生い立ち(生まれてからどこの学校に通い、どこの会社に就職したのか?など)
  • 褒章や受勲の有無

といったものを被疑者に質問し、調書に書き記します。

犯行の供述では、最近の経済状況や犯行前の足取りといったものを質問し、「なぜ犯行に至ったのか?(動機)」「犯行の手口」などを聞き出し、調書にまとめます。

犯罪者はよくウソを付くので、動機や犯行時の様子については何度も繰り返し質問し、正確な内容を取り調べます。

 

ちなみに供述調書には(甲)のほかに(乙)があり、(甲)は被疑者を取り調べたときの内容、(乙)は目撃者や参考人に聴取した際の内容を書く決まりになっています。

A登録(顔写真・指掌紋の登録):30分程度

取り調べが終わるとA登録をします。

A登録とは被疑者の身体的情報をデータベースに登録する作業のことで、

  • 指紋、掌紋
  • 体の傷跡や瞳の色、身長・体重、足のサイズ、入れ墨の有無やデザイン、身体の欠損部位の有無

などを登録します。

指紋・掌紋を採取する機械が各警察署の鑑識課の小部屋に置かれており、ガラス面に指を載せると内部からレーザー光線が照射され、デジタルな状態で指紋や掌紋が登録できます。

体の傷跡や入れ墨、欠損部位(ヤクザが指を詰めている、事故で失った部位がある)などの身体的特徴は被疑者を特定するのに非常に役に立つ情報ですので、できるだけ詳しく記載する決まりです。

身柄請け(微罪の場合のみ)

最後に身柄請けをします。通称「ガラウケ」。

被疑者を監督できる立場の人に迎えに来てもらって、被疑者を引き渡します。

これが一番時間がかかる場合が多いので、被疑者を警察署に同行させたあと、「誰が迎えに来てもらえるような人はいるか?」を聞いておき、取り調べをしている最中に警察署から連絡。迎えに来てもらって待っていてもらうパターンが多いです。

身柄請けを頼める相手としては、被疑者の親や親戚、妻(夫)、会社の上司が多いですね。身柄請けについては他の記事でも書いているので参考にしてください。

身柄請書の目的と意味、何のために書くのか?

 

微罪の場合は

  1. 取り調べ
  2. A登録
  3. 身柄受け

で手続きは終わるため、本人や身柄請けに来た人が他人に話さない限り、微罪処分されたことが周りの人に知れ渡る心配はありません。警察に捕まったからといって身柄を拘束されるわけでもなく、留置施設に入れられることもありませんし、柄請け人と一緒に警察署を出た後はすぐに仕事や遊びに行くことだって可能です。

逮捕された場合

微罪のような軽微な犯罪ではなく、大きな犯罪を犯して逮捕された場合は微罪とは少しだけ手続きが異なります。

弁解録取書の作成

取り調べを受けるのは同じですが、取り調べの前に『弁解録取書』というものを作成します。

逮捕された場合は身体の自由を拘束されることになる(手錠をかけられたり留置施設に入れられることになり、自由に歩き回れない。)ため、逮捕後の被疑者の処遇や権利、不服の申し立てについて説明し、弁解録取書として記録に残しておきます。

弁解録取書の作成後、供述調書の作成が始まります。

宿帳を作成し、留置施設(いわゆる牢屋)に入る

弁解録取書の作成、取り調べ(供述調書の作成)、A登録が終わったら、留置施設に入る準備をします。

宿帳(やどちょう)と呼ばれる帳簿に被疑者の氏名とともに所持品の一覧を記載します。留置施設から出る際、「財布の金が減っている!牢屋に入っている間に警察官に盗まれた!」などと騒がれるのを防ぐためです。

宿帳の作成は所持品検査も兼ねているため、下着まで脱がされて完全な全裸状態にされ、着ている服に隠しポケットが無いか?隠し持っていたものは無いか?を複数の警察官がチェックします。普通に考えたら人権侵害ですね。しかし逮捕された時点で人権は失ったも同然ですし、留置施設内に凶器などを持ち込まれると他の被疑者の安全が脅かされたり自殺されたりするリスクにつながります。安全上の措置として、全裸にして持ち物をチェックするわけです。

衣服以外の物や凶器になりうるもの(ベルトなど)は警察の方で保管して、釈放されたときに本人に返却する決まりです。

送検(明日送り、明後日送り)

刑事事件の場合、警察は被疑者を逮捕した後、48時間以内に検察に被疑者の身柄、事件の証拠品、関係書類を送致する決まりになっています。この48時間の間に、警察では事件の証拠を集めたり被疑者からの自白を引き出したりして、裁判で被疑者を有罪にできるよう尽力します。

ここで問題になるのが、48時間というタイムリミットです。

ルール上、48時間以内に送検する決まりなのは警察も検察もわかっているのですが、実務上、48時間というのは実態に即していません。

 

たとえば午前3時に逮捕した場合、翌々日の午前3時までに送検できれば『合格』です。

ところが翌々日の午前3時に間に合うだけでは実際には『不合格』になってしまいます。真夜中に被疑者を送検することがないからです。そんな時間に検察に行っても誰もいません。一見ルールにパスしたように見えても、合否の判定をする人が不在なため宙ぶらりんな状態になってしまうんです。

 

実務上は、警察は被疑者を逮捕したあと、48時間よりも遥か前に送検せざるをえません。実質的なタイムリミットは逮捕後48時間ではなく、「検察行きのマイクロバスの出発時刻」になります。

一日1回、被疑者を乗せて検察に行くバスが各警察署を周っているのですが、このバスの時刻に間に合うようにしなければならないんです。

送検のタイムリミット(逮捕後48時間)に間に合いつつ、なおかつバスの出発時刻に間に合わせることを考慮すると、逮捕した時刻に応じて2パターンの送検日が発生します。

  • 明日(翌日)送検
  • 明後日(翌々日)送検

の2つです。

 

逮捕した時刻が午前10時、検察行きのバスの時刻が午後1時だった場合、翌々日のバスに被疑者を乗せても逮捕後48時間(翌々日の午前10時)には間に合いません。

そのため、逮捕した翌日の便に乗せて被疑者を送検しなければなりません(明日送り)

 

逮捕時刻が午後5時、検察行きのバスの時刻が午後1時だった場合では、翌々日の便に乗せても送検リミット(翌々日の午後5時)に間に合うため、逮捕した日から2日後の便で送検しても問題ないことになります(明後日送り)

このように、逮捕した時刻によって送検までの残り時間、警察が証拠集めに費やせる時間が異なります。

まとめ

以上のように、警察に検挙された後の流れは犯罪の種類や規模によって少しだけ異なります。

微罪処分で済めばマシですが、逮捕されると仕事を休まなければならなかったり家族に大迷惑がかかったり、最悪刑務所に入ることになったりもするので法律を守って清廉潔白に生きたいですね。

警察の仕事に関するほかの記事