日々「公共の安全の維持」のために働いている警察官ですが、慢性的な人員不足に悩まされています。

警察官は誰もが就ける職業ではありませんが、一応公務員なためクビにならないなど身分が保障されており、またテレビドラマなどの影響もあって人気はあります。しかしそれにも関わらず慢性的な人員不足になるのはなぜなのでしょうか?

今回は警察官の数が常に不足してしまう(人員不足になる)理由についてご説明します。

警察官が人員不足になる理由

警察官の新規採用人数がそもそも足りない

警察官を含めた公務員は通常、採用試験に合格すると”採用候補者の名簿”に名前が載ることになります。

採用試験に合格したとはいえ、この段階では名簿に名前が記載されただけであって正式に採用が決まったわけではありません。そのため公務員試験を受けつつ民間企業への就職活動を行う人はたくさんいますし、市役所など他の公務員になるための試験を受験したり、他の都道府県警の採用試験を受験する人もいます。

そして主に4月の採用時期が近づくと、先ほどの採用候補者名簿に記載された人の元に連絡が行き「就職する気があるのか無いのか?」の確認が行われます。

警察官になるのを辞退する人の割合は毎年の採用状況からほぼ正確に推測できていますので、この時点では(書類上)欠員が発生しないように上手く調整されています。

 

今年警察官を新たに何人採用するかは各都道府県の予算の都合もありますが、基本的には現場の状況や犯罪の発生状況によって決まります。そして警察官は慢性的な人手不足ですが、欠員の数とちょうどピッタリの数だけしか新規採用できません

実はこの時点で既に欠員の発生が確定しています。

採用が決まり警察官になった人は、まず最初に警察学校に通うことになります。大学卒業者は6カ月間、高校卒業者は10カ月間です。この警察学校に通っている間に、新規採用された人のうち2割~3割が辞めてしまいます。現場に出て警察官らしい仕事をする前に退職するわけです。

お気付きでしょうか?

  • 採用人数:欠員を補充するのに丁度ピッタリな人数だけを採用する
  • 実際に現場に配属される人数:採用時から2~3割減少した”警察学校を卒業できた人数”

という仕組みになるため、現場に配属される警察官の人数は常に不足した状態になります。

現場の警察官たちが「これだけの人数が足りていないので人員を補充(新規採用)してくれ!」と懇願しても、実際に現場に配属される新人警察官の人数は予定していたよりもずっと少なくなるんですね。

 

この問題を解決する方法は簡単で「警察学校で脱落するであろう人数を予め多めに採用しておくこと」なのですが、途中で脱落する人にもしっかり給料は払わなければならないし退職金も支払うことになります。公務員ってこういう「どうせ辞めるだろうから」という理由で予算を多めに使うことってできないので、こんなアホな仕組みがまかり通ってしまうんですね。

人口減少中のド田舎にバカでかい役所を建てたり議会で寝ているだけの政治家たちにお金(税金)を払う余裕はあるのになあ…なんて思います。

ただ単に警察官の人数を確保すれば良いわけではありませんが、警察官の存在理由は公共の安全の維持です。本来の目的(治安維持)が達成できないのであれば、なにかやり方を工夫するべきです。

警察はブラックな職場なので人が逃げていく

警察官の人員不足を加速させているのが「ブラックな職場環境」です。

体育会系かつ昭和式の古い組織体質なため「上司や先輩が言ったことは絶対に正しい!」「見習い警察官(新人)は奴隷」という、旧日本軍のような風潮がいまだに存在しています。

平成生まれの若い方々には理解しがたいし納得しがたいことなのですが、警察組織を統率している幹部たちは昭和生まれのお爺ちゃんばかりなので、一般人ならすぐにオカシイと気付けるブラックな環境がいまだに常態化しています。(関連記事:警察=ブラック企業?警察官(法の番人)による労基法違反

いくら警察学校で洗脳しまくって”警察組織に忠実な下僕”を量産しても、時代の流れには逆らえませんし納得できない人は辞めていきます。とくに優秀な人ほど警察以外の場所でも活躍できるためどんどん辞めていき、長く警察に残っている人ほど役立たずな場合が多いです。

そして能力のない人たちが互いに足を引っ張り合った結果、必要な業務がこなせず組織全体での人手不足を加速させています。

クビにならないからこそ存在するゴンゾウ

仕事をしない警察官のことを警察用語で「ゴンゾウ」と呼びます。警察官は公務員なため身分が保障されており、よほどのことが無い限りはクビになりません。

ゴンゾウは警察官として全く戦力になりませんが、書類上は警察官としてカウントされます。実質的にはゼロ、もしくはマイナスな存在なのに書類上では1人としてカウントされてしまうんです。

ゴンゾウは地域警察官(交番勤務)に多く、本来ゴンゾウがやるべき仕事は他の警察官が代わりにやってあげています。つまり、まともに働いている警察官に負担がのしかかるわけです。

一般企業にもゴンゾウが何人かいますよね?頭の禿げたオッサンが多いのですが、一日中新聞を読んでいるだけだったりパソコンでネットサーフィンをしているだけなのに、なぜかたくさんの給料をもらっている人。しかも「課長補佐」とか「第2係長」とか、謎の役職が付いていて偉そうにしている人が。

この人たちがまともに働いている人の足を引っ張り、ブラックな環境を増長させたり現場警察官の人手不足を加速させています。

一般企業であればゴンゾウはクビにできますし早期退職を促すこともできます。しかし警察は公務員なため、どんなに役立たずであったとしてもクビにはできません。納税者の立場からすると納得できないですよね。

戦力外の病人でも警察官としてカウント

あまり知られていないことですが、警察官には精神を病んでいる人がたくさんいます

普通の人が相手にしないような人たち(犯罪者や頭のおかしい人たち)ばかりを相手にするのでストレスが溜まりますし、危険な思いをすることもあるのでとにかくストレスが溜まるからです。

定期的に休みを取ってうまくストレスを解消できれば問題ないのですが、人手不足なため希望通りに休みを取ることができずストレスが発散できません。そして心理的な負担が積み重なり、最終的には精神を病んでしまうんですね。

精神を病んでしまった人は、健常者と同じようには仕事ができません。正常な人であれば5分で片付くような仕事でも、1時間、2時間、ときには1日かかっても達成できなかったりします。

この方たち、あまりにも”ヤバイ”ので警察官としての仕事はやらせてもらえません。自殺防止のためけん銃を持たせることもできないので、当直勤務に就かせることもできません。

警察官らしい仕事は何一つできないのですが、それでもいちおう”警察官”です。そうです。この方たちもゴンゾウと同じように警察官1人としてカウントされてしまうのです。

警察官が慢性的な人手不足になる理由(まとめ)

以上のように警察官は

  1. 警察学校入校後、現場に配属される前に辞める人がいる
  2. ブラックな職場なため辞める人が続出する
  3. ゴンゾウや病人など”仕事がまったくできず戦力にならないのに人数にはカウントされる人”がいる

といった理由から、

  • そもそも必要な人数が確保できていない
  • 警察官としてカウントされているものの、実質的には使い物にならない人が大量に存在する
  • その結果、一部の人に負担がかかり人手不足を加速させている

という状況に陥っています。

警察は警察官・警察職員を合わせると全国に約26万人もいる大組織です。規模が大きすぎるがゆえに時代の変化に追いつけない、改善しなければならないと気付きつつも組織改革に時間がかかるといったデメリットがあります。しかし警察が担っている公共の安全の維持という役割は市民生活にとって重要です。改善すべきところは早急に改善し、人員を揃えて万全な体制で公安の維持に努めてもらいたいと思います。