警察官が登場するドラマや映画では、けん銃の

  • 発砲許可
  • 射殺命令

等の物騒な用語が使われることがあります。

凶悪な犯罪者が逃走したシーンでよく使われており、「撃つべきか」「撃たざるべきか」で葛藤する警察官の心情に焦点を当てる作品も多いです。

発砲許可、射殺命令は存在しない

警察ドラマが好きな方の夢を壊すようで心苦しいのですが、発砲許可も射殺命令も実際には存在しません。ドラマの中にだけ出てくる架空の設定です。

けん銃を使用する際の判断は各警察官にゆだねられており、交番の警察官も刑事課の刑事さんも、各自の判断でけん銃を使用することができます。

 

「そんなわけないだろ!誰か偉い人が発砲許可を出したり射殺命令を出したりしない限り、現場の警察官はけん銃を使用できるはずがない!」と思う方もいるかもしれませんが、けん銃の使用判断は各警察官が任意で行っています。

そもそも、誰か偉い人の許可がなければけん銃を使用できないのであれば、警察官がけん銃を持ち歩く意味がありません。

事件は待ってはくれないし、予め凶悪な事件が発生することを予想できたりもしないからです。

けん銃の使用には条件がある

けん銃の使用判断は各警察官に任せられていますが、その代わり、けん銃を使用するためにはいくつかの条件が課せられています。

たとえば警察官職務執行法第7条(武器の使用)もけん銃を使用する際の条件の1つです。

(武器の使用)
第七条 警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危 害を与えてはならない。

一 死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる兇悪な罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。

二 逮捕状により逮捕する際又は勾引状若しくは勾留状を執行する際その本人がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。

 

たとえば日本刀のようなものを所持した者が街中を徘徊しており、全身に返り血のようなものが付着していた場合で、相手が警察官の指示に従わずに抵抗したり逃走しようとしたりした時、この者を逮捕するために他に手段がないのであればけん銃を使用することができます。

もちろん警察官がこの者を逮捕するのを邪魔する人がいた場合にも使用が可能です。

 

これらは一例にすぎませんが、とにかく、

  • 警察官のけん銃使用は警察官本人の判断に任せられている(上司の命令に従う必要はない)
  • けん銃の使用には条件が課せられている

ということだけ覚えておいてください。

発砲すべきときに発砲しないと警察官が罰せられる

けん銃の使用判断については全警察官が重点的に法的解釈を学んだり、判断基準を暗記したりしている分野です。

なぜならば、本来けん銃が使用できたはずなのに現場に居合わせた警察官がけん銃を使用せず、その結果被害が拡大してしまった場合には警察官の責任になってしまうからです。

つまり、使うべきではないタイミングでけん銃を使用してしまうと罰せられるのと同じように、使うべき時に使わなかったことでも罰せられてしまうんです。

  • けん銃を使うべきではないときには使わない
  • けん銃を使うべき時には躊躇なく使う

この両方が実行できなければならないわけですね。

20年くらい前までは「手に取るな、(引き金に)指を入れるな、引き金引くな」が警察官の中では常識だったそうですが、現在では「撃つべき時には撃つべし!」が常識になっています。

撃つときは被害を最小限に

けん銃は各自の判断で撃てますが、もしも発砲する場合はできるだけ被害が出ないように留意します。

威嚇射撃で犯罪行為をやめてくれそうなのであれば威嚇射撃で済ませますし、人に向かって撃つ場合も下半身を狙ったり、射線上に無関係な通行人がいないように気を付けます。

発砲許可も射殺命令もありませんが、「当たったら死ぬ」ような急所は避けて撃ちますし、一般人への被害も最小限に留めなければなりません。

まとめ

今回は発砲許可・射殺命令の話から始まり、けん銃の使用に関する話題に触れました。

けん銃を所持している警察官は各自の判断でけん銃を撃つことができます。上司の命令や許可を待つ必要はありません。

警察ドラマで出てくる「発砲許可」や「射殺命令」は茶番でしかないので、騙されないようにしたいですね。