宮城県仙台市の東仙台交番で、警察官が刺殺される事件が発生しました。
報道によれば、近所に住む大学生が「落とし物を拾った」として届けに来たフリをして油断させ、対応した巡査長を刃物で殺害したとのことです。
このような事件や警察官を狙った犯行は過去に何度も発生しており、犠牲者が出る度に対刃防護衣などの装備品の見直しやバージョンアップがされたり、交番を狙った犯行を防ぐ訓練などがされてきました。
また、交番内の机や椅子の配置にも配慮されてきましたが、今回は犯行を防げませんでした。
対刃防護衣は未装着
各警察本部では事件現場に真っ先に到着して対応したり、一般市民と接したりする機会の多い交番警察官には対刃防護衣を装着するよう指示しています。
対刃防護衣は各警察本部ごとに開発が行われ、交番の各警察官に配備されています。
本来であればカッターナイフや包丁程度の刃物による攻撃であれば防げたのですが、今回の事件当時、殉職した巡査長は対刃防護衣を装着していなかったそうです。
犯人が近所に住んでいたことを考えると、普段から交番内では対刃防護衣を脱いでいる警察官が多いことを知っており、拾得物の届け出程度では対刃防護衣を付けないこと、犯行時間帯には警察官たちの気が緩んでいることなどを熟知していた可能性が高いです。
すでに犯人は他の警察官に射殺されているため真実は闇の中ですが、今回の事件をきっかけに全国の交番勤務の警察官宛てに警察庁と各警察本部長から”お達し”が届いていると思われます。
現場の警察官すれば「またお達しか…」とうんざりしていることでしょう。
富山の警官殺しは教訓として活かされなかった
今年の6月には富山県で警察官が殺害され、けん銃を奪われています。
その時も交番勤務の警察官がターゲットにされたわけですが、教訓はまったく活かされませんでしたね。
毎日のように大量の”お達し”が届き上司が変わる度にルールが変更される現場警察官にとっては、お達しをいちいち見ていられないし重大な通達であったとしても見逃してしまいます。
大量のスパムメールの中に重要なメールが1通だけ混ざっているようなものです。
おそらく富山の事件直後に出された「交番内でも対刃防護衣は着用するように」との通達も、これでは効果がありません。
また簿冊が増える…
警察官が当事者になるような重大な事故や事件が発生すると、不祥事の時と同じで「届け出」や「簿冊」が増えます。
勤務交代時に無線機やバイク、交番のカギなどの引継ぎと簿冊でのチェック(誰がどの無線機を持っているかなど)をするのですが、今回の事件のせいでまた新たに簿冊が増えたかもしれません。
富山の警官殺しのときにすでに作られているかもしれませんが、おそらく「対刃防護衣を装着しているか?」をチェックするくだらない簿冊が増えているんじゃないかと予想されます。
あるいは上司がときどき抜き打ちでチェックして、付けていないことがバレたら監察官室やさらに上の上司に報告してたりして…。
簿冊を作ったところで襲われるときは襲われるし、襲われない時は襲われません。
交番内で対刃防護衣を付けていない警察官なんて五万といるし、いままではそれでも大丈夫だったから今回のような事件が起きたはずです。
上級幹部たちは簿冊づくりをして責任逃れに必死になるんじゃなく、交番が襲われにくい仕組みを作ったり現場の警察官たちが交番内で付けていても疲労や不快感を感じないような対刃防護衣を作ったりすることを優先しなければなりません。
責任逃れに必死になっている間に次の犠牲者が出かねませんから。