補導された子どもを警察に迎えに行くときや犯罪を起してしまった家族を迎えに行くとき、さらには痴ほうや迷子になった人を迎えに行くときは、警察側から「身柄請書(みがらうけしょ)」を書くように要求されることがあります。

身柄請書の様式は色々あり警察側で用意してくれたりもするのですが、そもそも何のために身柄請書を書くのでしょうか?

身柄請書を書く理由について、警察側から説明される理由(表の理由)と、説明はされないけど身柄請書の本来の目的(裏の理由)について解説いたします。

警察官になったことがある人しか知らない情報です。

身柄請書を書く目的

身柄請書は何のために書くのかというと、罪を犯した人や非行少年を取り調べたりしたあと、被疑者・非行少年を親や監督できる人たちに引き渡し、「もう二度とこのようなことがないように厳しく言い聞かせた、私が責任を持って監督します。」という反省をさせるとともに今後の監督責任を認めさせるための文書です。

身柄請書は司法手続き上は絶対に必要なものとされておらず、

  • 反省文の内容(「今後は二度と同じ過ちを繰り返さないように厳しく言い聞かせます」など)
  • 被疑者・非行少年の氏名
  • 身柄を受け取った親や家族、監督責任者の署名・押印
  • 日付

などの必要最低限の様式が整っていれば、各警察署ごとに違っていたり警察官ごとに微妙に文言が違っていたりします。わりと適当ですね。

場合によってはコピー用紙などにその場で手書きで書くこともあります。

 

身柄請書を書くことによって被疑者や非行少年を引き渡された人には監督責任が生じ、書類上、同じような犯罪を犯さないように監督したり、子どもが深夜徘徊や喫煙といった非行に走らないように指導しなければなりません。

実際は特に何らかの施策をする必要もないし、誰かに施策を報告したりする義務もないんですけどね。

 

以上の内容が身柄請書を書く「表の目的」になり、警察的には模範解答になります。

警察署で身柄を引き渡される家族や監督責任者も、警察官から同様の説明を受けるでしょう。

身柄請書を書く裏の目的

表の目的があれば「裏の目的」も当然あり、こっちが本来の目的になります。

裏の目的とはズバリ、「身柄請書を書いた後のことは警察は一切関知しないし、責任も負わない。」という担保の意味で書かせています。

 

万引きや自転車盗、暴行や非行などで警察に捕まった人は普段とは違う精神状態に陥ることが多いです。

本人は自覚していなくても異常に興奮していたりクヨクヨしていたり、自分のしてしまったことを必要以上に後悔していたりします。

そういう精神状態のときは突発的に自殺を図ってしまったり、道路に飛び出すなどの行動をとってしまうことがあります。

 

もしも被疑者や非行少年の身柄を警察が預かっているときに自殺等が起こってしまった場合、これはとんでもない重大事件、警察にとっては致命的な不祥事になります。

だから取り調べを終えて警察署をあとにした被疑者が仮に自殺などを図ったとしても、警察側には一切火の粉がかからないようにするための担保として身柄請書は機能しているんです。

身柄請書を親などの監督者に書かせて警察が身柄請書を受け取った時点で、被疑者や非行少年の生命や身体に関する責任は警察の手を離れることになります。

あとは何が起ころうが警察の知ったことではありませんし、責任を負う必要もありません。

 

家に帰る途中で交通事故を起こそうが自殺してしまおうが、警察には何の責任もありません。

全ての責任は身柄請書を書いた保護者や監督者側にあります。

このような事情があるため、警察では身柄を保護した被疑者や非行少年、徘徊老人や迷子などを引き渡す際、必ず身柄請書を取るんですね。

 

  • 表の目的:警察から監督者側に身柄を引き渡した事実を明らかにするためと、監督者側が今後の責任をとることの誓約としての意味。
  • 裏の目的:何かが起きた際、警察が責任をとりたくないから。そのための保険。

として身柄請書は機能しています。

 

裏の目的は、身柄請書を書く保護者や監督責任者に対して警察側から説明されることは絶対にありません。表の目的だけを説明し、書類を書いてもらいます。

しかし警察としては裏の目的が本来の目的であり、誰にも本来の目的が説明されないまま処理されていきます。

 

本来の目的を知っていたところで何の得にもなりませんが、警察には表と裏で2つの意味を持つ業務や書類がよくあるので、なにか書類を書かされる機会があればどのような目的で書かされるのか?また、本当はどういった目的があるのか?を考えてみると面白いですよ。警察のことがいかに信用できないかよくわかるので(笑)