私が警察官になる際、知人から言われた印象的な言葉があります。

「警察官は疑うのが仕事。俺とは正反対だね。」

その知人は教師を目指しており「教師は生徒のことを”信じる”のが仕事だ」というのが知人の持論だったため、このようなことを言われたわけです。

私が実際に警察官になったとき、知人が言っていた言葉が真実だったと実感しました。

疑わなければ悪事に加担してしまうこともある警察官という職業

警察官になってからというもの、私は職質した相手のことを疑い、検挙した被疑者の言葉を疑い、困りごとの相談で交番に来所した市民のことを疑い、プライベートでも自分に近づいてきた人のことを疑う…。本当に朝から晩まで疑ってばかりです。自分でも嫌になるくらい人のことを疑ってばかりいました。

これだけ他人のことを疑ってしまうのも、職業上必要だったからです。

なぜなら警察官は一般人では知りえない高度な個人情報を簡単に入手することができる立場であり、また特権的な権力も持ち合わせているため悪い人間たちに”利用されてしまう危険”があります

 

たとえば「仲の良い知り合いと連絡がとれない。探してくれないか。」といった相談が寄せられたとします。

相談者のことを疑うことなく何の疑問も抱かずに警察の組織力をもって捜索を行ったとして、実はその相談者がストーカーで、捜索対象者がストーカーから逃げていた場合はどうなるでしょうか?

車のナンバーから走行した地域を特定し、クレジットカードの利用履歴をカード会社に照会して活動範囲を絞り、不動産会社に問い合わせたり聞き込みを行ったりして住んでいる場所を特定する…。警察官ならこういったことが可能です。

警察官のせいで、ストーカーから逃げていた善良な市民の生命・身体・財産に危険が及ぶことになります。

このように警察官という立場を利用すれば、通常では困難なことでもあっと言う間に実現できてしまいます。警察官が持つ情報や捜査能力を悪用したいと考えている者からすれば、夢のような存在です。

こういう悪い輩がいるため、警察官は職務中でもプライベートであっても、常に相手の言動に注意を払い「疑わなければならない」んですね。

もしも相手のことを疑わなかったら、そのときは警察官自身が犯罪に加担してしまう可能性だってあります。

DVやストーカー被害から逃げていたのに警察官のせいで居場所を知られ、逆上したストーカーに命を奪われたり暴力を振るわれたりする危険があるんですから。

警察官の守秘義務と範囲。やりがちな守秘義務違反の例でも書いたように、警察官は職務上知りえた情報を漏らしてはいけません。警察官だからこそ知りえた情報なのだと自覚し、近づいてくる相手のことは疑ってかかる必要があります。

被疑者はウソをつく

取り調べや少年補導の際にも注意が必要です。

裁判のとき有利になるように犯罪者は取り調べでウソの供述をしますし、補導された少年も親や学校にバレるのを恐れてウソを付きます。

被疑者の供述や補導した少年の言葉がウソであることを前提に接しないと、取り返しのつかない失敗をしてしまう危険があるんです。

ときには警察官自身の身を亡ぼすことにもつながるので、相手の言葉が真実か?嘘か?常に疑ってかかり、裏付けを取る必要があります。

警察官は疑うのが仕事

警察官が疑り深くなければならない理由をご紹介してきましたが、これらはほんの一例にすぎません。

人の発言を素直に受け止めることができず、なにか裏があるんじゃないか?真実を話していないのではないか?と疑い、疑り深く生きなければならない職業…。警察官ってやっぱり嫌な仕事ですね。