警察官は職務質問中、相手のどこを見て、何を見て

  • 怪しい
  • 怪しくない

を判断しているのかご存知ですか?

職務質問中に警察官が注意深く観察している体のパーツや動き・言動、職務質問のテクニックについて解説します。

職質中は「目の動き」に注意

「目は口ほどにものを語る」と言いますが、本当にそのとおりです。

人は考えていることや気になっていることが無意識のうちに”目の動き”として現れます。

そのため警察官は職質中、相手の目の動きを見て何か隠していることが無いか、怪しいものや所持してはいけないものを隠し持っていないか?隠し持っているのであれば「どこに隠し持っているのか?」を目の動きを見ながら判断しています。

たとえば何かやましいことがあったり職質されて動揺しているときは、目の動きがせわしくなりキョロキョロと左右に動きます。また、財布やポケット、車のトランクなどに薬物などを隠し持っていた場合には、その場所にチラチラと視線を動かしてしまったりします。

警察官はそういった目の動きから「なにかを隠している」「あの場所にはなにかがある」といったことを判断し、所持品検査をする際の参考にもしています。

NLPも有効

職務質問では『NLP』というテクニックも用います。

NLPとは神経言語プログラミング(Neuro Linguistic Programming)のことで、心理学のテクニックです。

人間が考えていること(脳の動き)は特徴的な体の動きや使う言葉として現れるため、職質相手の体の動きや使った言葉を注意深く観察していれば、相手が何を考えているのか?どういう性格の人なのか?がある程度正確に推測できます。

たとえば所持品の中から本人のものではないと思われるクレジットカードが見つかり、警察官が「これはあなたのカードですか?」と質問したとします。

その際、職質相手が「これは家族から借りているもので…」と視線を右方向(警察官から見て左側)に移しながらしゃべっていたら、「これは記憶をもとに話しているのではなく、想像上のことを話している。つまり、ウソを付いている。」と判断できます。

あくまでも参考程度にしかできませんが、職質相手がどのような人物なのか?何を考えているのか?を判断する材料になります。

職質では「手の動き」に注意

手の動きも重要です。

犯罪者がなにか見つかってはマズいモノ(たとえば覚せい剤)を持っているときに、運悪く警察官に職務質問されたとします。その場合、犯罪者はなんとかして見つかってはまずいものを捨てようとします。

警察官の隙をついて近くの草むらに捨てることもあるし、自ら隙を作り出すような言動をとって、警察官の死角になっている角度から道路に捨てることもあります。

会話中や無線での照会中でも決して相手から目を離さず、とくに手の動きには注意するのが職務質問の基本中の基本です。

私が職質の指導員に教えてもらった事例だと、やましいことがある人は警察官に声を掛けられた瞬間に財布やポケット(薬物などが隠してある場所)を触るそうです。そういう場合は一瞬で「この場所になにかある」と分かるので、相手が最初に触った場所を所持品検査で確認させてもらうとすぐにヤバいモノが見つかると言っていました。私の実体験としても同意見です。

相手との間合いにも注意

手の動き・目の動きとも関連しますが、相手との間合い(距離)にも注意が必要です。

何か犯罪を起こしてしまって絶対に捕まりたくない人や追い詰められた人は、警察官に殴りかかってきたり隠し持っている刃物で反撃してきたりします。そのため相手との間合いには常に注意を払わなければなりません。

また間合いと似ていますが、警察官は「自分と職質相手との位置関係」にも注意を払う必要があります。自転車に乗っている人に職質した時でさえ、相手と自分との位置関係は重要です。

なぜならば、その自転車が盗品で絶対に捕まりたくない場合、相手は自転車を警察官にぶつけて逃走を図ろうとすることも考えられるからです。

私も自転車に乗っている人に職質した際、はじめは自転車から降りて素直に従ってくれていたものの、車体番号から持ち主を照会している最中に突然自転車を私の方に押し倒してぶつけ、駆け足で逃走を図られたことがあります。「武器や障害物になるもの」を挟んで相手と警察官が向き合う位置関係になった場合はこのようなことが起こりえます。

相手との間に物を挟むのではなく(この場合は自転車)、逃走を図られてもすぐに対応できる位置(相手のすぐ隣)に立っていることが重要です。

難しいですが、相手が攻撃してきてもすぐに避けられる間合い、逃走してもすぐに追いかけられる・そもそも逃走を企てるスキを与えない位置に立ちながら職質する必要があります。

言動や持ち物、態度に不審点はないか?矛盾点はないか?

基本中の基本になりますが、警察官は職質時、相手の言動や持ち物に矛盾点・不審点が無いかも当然注意深く観察しています。

女性用のバッグを持った男が一人でいればひったくり(強盗)を疑いますし、平日の昼間に車のトランクに金属バットを隠し持っている運転者がいれば凶器に使用する(使用した)ことを疑います。もちろん所持していただけでは犯罪性はありませんので、職務質問して犯罪性の有無を確認するわけです。

もしかしたらデートの最中で、彼女からバッグを預かった後にはぐれてしまっただけかもしれませんし、野球の練習があるので練習場に向かっているだけかもしれません。

彼女さんの名前を問いただした後、彼女さんに電話をしてもらって確認を取ったりバッグの中身から持ち主のわかるものを確認することもできます。所属している野球のチーム名を聞いたり、向かおうとしている練習場の場所、守備のポジションやなぜ他の野球グッズを持っていないのかを聞いたりすれば犯罪性の有無や矛盾点がないかを確認できます。

職質のテクニックは職質以外の場面でも使っている

以上のように警察官は職務質問の際、

  • 何か隠していることがないか?ウソを付いていないか?
  • 持っているものをコッソリと捨てようとしていないか?
  • 反撃してきたり刃物で襲ってきたりしないか?逃走を図っていないか?

を常に気にしながら会話したり所持品検査したりしています。

そしてこれらのテクニックは職務質問の時だけではなく、交通取り締まりや少年補導、巡回連絡、住民相談のときにも注意しています。犯罪者はどこに隠れているかわかりませんし、職質したときにだけ犯罪者に巡り合うわけではないからです。

交通違反をしたドライバーが薬物を隠し持っていた、アパートの隣人の騒音について相談に来た人が実は警察官のけん銃を奪おうと目論んでいた…なんてこともザラにあります。

警察官はいつも犯罪者に遭遇する可能性や犯罪者に襲われる可能性を念頭に置き、どんなときでも犯罪を見逃さないよう、そして自分が犯罪の被害者にならないように注意しなければならない職業なのです。

常に相手を疑って接しなければならない、難儀な職業ですね。

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