今回は警察官が仕事中に使う7つ道具の1つ『無線機』について解説いたします。

警察官が使う無線は主に2系統あり

  • 本部系
  • 所轄系

の2つに分かれます。

警察本部と各署の連絡に用いられる「本部系」

1つ目は本部系と呼ばれる無線系統です。その名が示しているように、主に警察本部との連絡のために使われます。

110番通報が入ると各都道府県警本部の通信指令センターにつながりますが、通信指令センターではイタズラ電話と事件・事故などの警察官が対応すべき内容を選別します。

そして警察が対応すべき事案については本部系の無線を使い、該当する警察署や機動警ら隊、交通機動隊といった本部執行隊などに住所や事件の概要を連絡します。

ほとんどの警察本部では管轄区域を地域ごとに区切っている(方面などと呼ぶ)ため、本部系の無線を聞いていると自署管内だけではなく隣の所轄で発生した事件・事故の通報を聞くことができます。自署管内以外の事件・事故の通報も聞けることによって、隣の署の管内で発生した強盗事件の被疑者が自署管内方向に逃走している場合などで、早急に検問を張ったり被疑者の確保に結び付けたりすることができます。

 

本部系の無線は各警察署にある指令室(通称:リモコン)の他、各警察車両に搭載されている本部系の警察無線でも送受信ができます。緊急性の高い110番通報が入った際には本部から該当する警察署に連絡するのではなく、現場に一番近いパトカーや警察車両に直接指令することもあります。

本部系の無線機は送受信できるタイプのものは出力が大きいため無線機自体のサイズも大きく、通常は携帯することができません。受信専用のもの(受令機)は小型なため胸ポケットに入れて持ち運ぶことが可能です。機動隊など警備部での活動では現場指揮官の伝令係がリュックサックのように背負っていることがありますが、交番勤務員の街頭活動など通常の業務では邪魔になるため持ち歩くことは少ないです。

各警察官は本部系無線を受令機で傍受する

本部系無線は交番に勤務する制服警察官も日常的に傍受しています。

「受令機」と呼ばれるラジオのような小型の受信機を使うことで、現在警察本部にどのような通報が入っているのか?自署や近隣警察署管内でどのような事件が発生しているのか?をリアルタイムで聞くことができます。

本部からの指令をリアルタイムで聞けるため、仕事の出来る交番警察官はリモコン(警察署内にある指令室)からの命令を受ける前に事件現場に急行したり交通事故の処理に向かったりします。また、「隣の交番勤務員は今は事件対応のため交番を留守にしているな」といったこともわかるため、隣の交番の管内までパトロールを行ったり、隣の交番管内で発生した事件でも自ら進んで対応したりします。

受令機は通常ではイヤホンを付けて傍受するため、警察官がイヤホンのようなものを付けていたら「受令機で本部系の無線を聞いているんだな」と思ってもらってOKです。

車両などに搭載する本部系の無線機や受令機はチャンネルを切り替えることにより、他の方面の本部系無線を聞くことができます。私は交番勤務をしていた頃、ほとんど事件が起きない暇な日には忙しいことで有名な地域の本部系無線を聞きながら時間を潰していました(忙しい署に異動したときのためのイメージトレーニング)。

警察署内の指令室と各携帯型無線機をつなぐ「所轄系」

交番の制服警察官は受令機で本部系無線を聞きながら、所轄系と呼ばれる無線機で自署の指令室にいる係長や他の交番勤務員と連絡を取り合っています。制服の帯革(腰ベルト)にけん銃や手錠、警棒などと一緒に持ち歩いているのが所轄系無線機です。

所轄系無線にはスピーカーの他、こちらから送信するためのマイクや送受信用のアンテナが付いています。

 

所轄系無線機も本部系と同様にチャンネルを切り替えることができるため、交通取り締まりをする際や事故現場で交通整理をする際などには普段使用しているチャンネルとは別のチャンネルに切り替え、他の勤務員に取り締まり時の音声が聞こえないように配慮することがあります。取り締まりや交通整理の音が絶え間なく聞こえてしまっては重大な指令を聞き逃すことがありますし、なによりも常に音が聞こえているとウルサイですからね。

警察官は無線機を使い分けながら職務遂行にあたる

以上のように警察官は2系統(本部系、所轄系)の無線を使い分けながら事件・事故への指令を受けたり、上司に現場の状況を説明したり、職務質問時の各種照会などを行っています。警察無線の使い方は警察学校で学ぶ最も基本的なスキルの1つですが、無線機の使い方1つで仕事の効率が上がったり犯人逮捕など職務遂行能力に影響が出たりするので侮れません。何気なく使っているように見える無線機ですが、意外と重要なアイテムなんですね。