先日、デジタル大臣・河野太郎さんのツイッターを見る機会があったのですが、興味深いものを見つけました。

 

どうやらマイナンバーカードの普及事業に関して、反対派の人たちからクソリプを送り付けられていたようです。そしてその中に、コラージュした画像をリプライしたものや過激な暴力表現をしたものがあったため警察に届け出た様子でした。(いいぞ、もっとやれ!)

それで河野さんのツイートの何が興味深いのかというと、「ハンコをお願いします」と言われて、供述調書に署名と認印を…。という部分です。

河野さんはデジタル担当大臣として、これまで行政手続きのうち押印が必須ではない手続きについては積極的に押印制度の廃止を進めてきました。そんな河野さんに対して警察は押印を求めるのか…というのがこのツイートの笑える部分だったわけです。

デジタル化時代なのに警察の供述調書には署名・押印が必要な理由

押印の廃止、そしてデジタル化が進む時代にもかかわらず、なぜ警察では押印が必要なのか?これには理由があります。

実は警察官の仕事には大きく2つの種類が存在し、【司法警察】【行政警察】に分かれています。このことについては既に警察官の2つの顔。司法警察と行政警察とは?違いを解説。という記事でも紹介しました。

行政警察というのはいかにも公務員らしい業務のことで、たとえば住民からの相談を受ける、遺失物・拾得物の届け出受理、車庫証明に関する手続き、道路の使用許可、デモや集会の開催に関する届け出受理、銃などの危険物の所持に関する手続き、パチンコや風俗店の営業に関する手続きなどがあります。

実のところ、行政警察としての仕事は警察官でなくてもできる内容ですが、「じゃあ警察官じゃなくて誰にやらせたらいいの?」と聞かれたら、誰もが困ってしまうような仕事です。そのため、警察官が(やむを得ず?)適任者として業務を行っています。

それに対して司法警察というのは、司法手続き、すなわち裁判に関係する仕事のことです。犯罪の捜査、被疑者の逮捕、証拠品の捜索・差し押さえ、証拠品の保管・返還、拘留、起訴などが司法警察官としての仕事になります。

そして河野さんがこれまでに廃止してきた押印手続きは、実は行政手続き(行政警察)に関するものだけでした。つまり、司法手続きに関しては押印廃止の手が及んでいないのです。

今回、河野さんが警察署で行った手続きは被害届の提出、それから供述調書の作成ということでしたが、どちらも司法手続きに関する内容です。ツイートでは供述調書の作成時に押印を求められたとありましたが、おそらく被害届を提出した際にも押印したと考えられます。

なぜ司法手続きは押印の廃止ができないのか?理由は不明ですが、行政手続きに比べて遭遇する機会が極端に少ないですし、一般人が関わる機会も滅多にありません。デジタル化を進めたり国民の利便性を高めたりする目的を考慮すると、まずは国民が遭遇する機会が多く、社会全体で見ても件数が圧倒的に多い行政手続きの方から押印の廃止を進めることになったのではないでしょうか。

著名人・政治家はもっと気軽に通報してもいい

今回の記事のネタ元となったツイートは、現役の大臣がネット上の悪質なコメントに対して被害を届け出たものでした。立場上、難しいのかもしれませんが、著名人や政治家はもっと気軽に通報したり被害の届け出をしても良いのではないかと思います。

表現の自由というのは、お互いに敬意を表している状態でなければ成立しません。または、お互いが敬意を持たずに表現しあってもよいのですが、立場上、敬意を表さずに返信することができない人に対して一方的に悪質・失礼なコメントを送り付けるというのは、表現の自由として看過されるべきものではありません。特にツイッターは荒れやすいSNSではありますが、悪質なものに対しては積極的に法的措置を取り、ネット上の治安維持に協力していただきたいと感じました。

有名な政治家や大臣になると悪質で限度を超えるような個人攻撃が頻繁に発生しています。その現場はネット上だけではなくリアルの世界にも及びます。私も以前勤めていた所轄の管内に とある大臣の家があったので私邸警戒をやったことがあります。その際にも、、、この話はまた次回に。

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